保存修理工事

保存修理工事

長年の風雨により傷みが激しくなった重要文化財旧中筋家住宅の保存を図るために、和歌山市が事業主となり、平成12年(2000)2月に保存修理事業にとりかかりました。事業は財団法人和歌山県文化財センターに設計監理を委託し、文化庁及び和歌山県の指導のもと、約10年の月日をかけて平成22年(2010)3月に完了しました。また、重要文化財指定の6棟だけでなく、茶室・味噌部屋・人力車庫の未指定文化財なども修理修復しています。

建築 準備
修理 修理前主屋
〔修理前の主屋〕
修理 仮設足場
〔仮設覆屋の建設〕
建築 2000~

■ 修理準備
まず始めに建物の破損状況や原因を調査します。つぎに建物ごとに修理方針を検討し、関係諸機関と調整のうえ、修理の全体計画を立て、文化庁へ申請をしました。

■ 仮設工事
修理する建物の周囲に、作業用の仮設足場を設置し、修理中に風雨にさらされないよう屋根で覆います。また解体部材を調査・保管・修理するための工作保存小屋を敷地北側に建設しました。

建築 調査解体
修理 瓦屋根解体
〔主屋屋根瓦の解体〕
修理 調査・解体
〔長屋蔵小屋組の解体〕

■ 調査・解体
解体前に各建物の現状を写真や実測図に記録します。続いて各部材に名前や位置を示した番号札を取り付け、建てる時の逆の手順で解体していきました。解体は破損状況・改造の有無などを慎重に把握しながら行い、要所で写真や実測図をとり、その都度、修理方針を再検討しました。また、傷んでいないところは無理に解体せず、そのまま残すようにしました。

建築 補修組み上げ
修理 柱の補修
〔柱の補修〕
修理 補修組み上げ
〔主屋の組み上げ〕

■ 補修・組み上げ
解体した部材を工作保存小屋に運び補修します。解体しない部分は、その場で補修します。傷んだところは継いだり、樹脂で補修したりして、できる限り再生しました。再生できなかった部材は、新材を加工して補足しました。補修が終わると、解体と逆の工程で再び組み上げます。木部を組み、屋根を葺き、壁を塗って仕上げていきます。

建築 現状変更復元
修理 現状変更カマド
〔カマドの復元〕
修理 畳作成
〔手縫い畳の作成〕

■ 現状変更・復元
解体調査や発掘調査をしたことにより、各建物の変遷が明らかとなります。かつての姿から、現状が大きく改変されてしまっているところは、文化庁の許可を得て復元しました。主屋の煙出し・カマド、主屋の前の板塀、長屋蔵・北蔵の間仕切りなどは、今回復元しました。また襖の唐紙は在来の仕様で一部は版木からおこして新調し、畳も一部は在来の仕様で手縫いの畳を新調しました。

建築 完成
修理 素屋根解体
〔仮設覆屋の解体〕
修理 外壁塗り
〔土塀の壁塗り〕
建築 ~2010

■ 完成
外回りの工事が完了し、足場や仮設屋根を撤去しました。外壁を塗りなおし、内部に建具や畳を入れて完成です。