和歌山市の文化財・遺跡

十王図

詳細情報

読み仮名 じゅうおうず
指定 市指定文化財 美術工芸品
指定日 平成31年(2019)3月15日
時代 室町時代
地区 貴志・野崎・湊・楠見地区
所在地/所有者等 梶取/総持寺

 一幅につき一尊を描いた十王図で、画面中央に衝立(ついたて)を背にして坐る十王をひときわ大きく配し、その左右に男女の冥官(めいかん)(冥界の役人)を、中央下部に邏卒(らそつ)等によって裁かれる死者を、下部に六道図(りくどうず)(六道(天人道(てんにんどう)・人道・修羅道(しゅらどう)・畜生道(ちくしょうどう)・餓鬼道(がきどう)・地獄道)の有様を描いた図)を描いたものです。本来は十二幅一具または十幅一具であったもののうち、「閻羅王(えんらおう)」「都市王」「五道転輪王(ごづてんりんおう)(以下、転輪王)」の三幅のみが現存しています。静嘉堂文庫美術館(せいかどうぶんこびじゅつかん)所蔵の「十王図(以下、静嘉堂文庫本)」(14世紀 明 重要美術品)を祖本(そほん)として製作されたものと想定されますが、六道図や追善(ついぜん)供養者(くようしゃ)、「老ノ坂(おいのさか)」図(人間が生まれてから死ぬまでの段階を表した図)などが付け加えられており、唐物(からもの)(中国・半島作)の十王図の図像が転化を遂げ、死後の六道巡歴を主題とする六道十王図となっていく過程を示している作例と考えられます。
また、西山浄土宗(せいざんじょうどしゅう)の中核寺院である総持寺に浄土曼荼羅である「当麻曼荼羅(たいままんだら)」とともに伝世していることからも、「当麻曼荼羅」とともに絵解きの際に使われたものとも考えられます。その意味では「転輪王」幅の「老ノ坂」図の図様が同じく絵解きの道具立てであった「熊野観心十界曼荼羅(くまのかんしんじっかいまんだら)」の成立に影響を与えたものと考えられます。
(写真)閻羅王、都市王、五道転輪王