歴代紀州藩主奉納刀

〔種別〕工芸

 東照宮に伝来する刀剣は紀州徳川家初代藩主頼宣以来、歴代藩主によって寄進されたものです。これらの太刀はいずれも寄進者が糸巻太刀拵を新調して寄進するのを慣わしとしていました。刀身は、家康が所持したと伝えるものと初代頼宣から六代宗直までが寄進したものは、平安時代~鎌倉時代に作刀された古刀が多くみられますが、それ以降に寄進されたものは、江戸時代に新たに作刀された新刀が多くみられます。なお、これらの刀剣を寄進する際には、奉納者が新たに糸巻太刀拵を新調することが慣例となっていました。

〔写真〕太刀銘備前長船守行糸巻太刀拵(紀州藩二代藩主徳川光貞奉納)、太刀銘肥前佐賀住行永糸巻太刀拵(紀州藩十代藩主徳川治宝奉納)

刀 銘長曽称興里入道虎徹

〔種別〕工芸

 寛文2年(1662)、初代藩主徳川頼宣が命じて造らせたという伝承がある虎徹作の長刀(身長98.5cm)です。虎徹とは、甲冑師でもあった長曽祢興里の入道名の一つで、興里は江戸時代前期の新刀の名工です。昭和2年(1927)5月、紀州徳川家第16代当主徳川頼貞により奉納されました。

〔写真〕刀身

木造梵天帝釈二天王立像

〔種別〕彫刻

 梵天・帝釈と呼ばれる二躰の菩薩像は梵天・帝釈天の形相ではなく、ともに左手に蓮華を執り、右手を躰側に垂らす通常の菩薩像の姿をしています。
 梵天像(像高163.9cm)は彩色を施した欅の一木造、帝釈天像(像高161.2cm)は彩色を施した檜の一木造りであるなど材質が異なるだけでなく、梵天像が十一面観音立像と共通する簡潔な作風であるのに対し、帝釈天像は眉目の彫りがやや深く、衣文に膨らみがあるなど作風も大きく異なることから、後世に一対として組み合わされたものであると考えられます。
 なお、梵天像の彩色は剥落が著しいですが、帝釈天像は大型団花文の散らされた裳や天冠に彩色が良く残っており、本来の華やかな姿を偲ぶことができます。

〔写真〕梵天像、帝釈天像

木造十一面観音立像

〔種別〕彫刻

 本像(像高183.0cm)は両手・両足先・頭上面などを別材とした内刳りの無い檜の一木造の十一面観音立像です。右手首の形から本来は錫杖を手にする長谷式の観音像であったと考えられます。眉目や衣文の彫りが簡潔であるなど平安時代後期(11世紀前半)頃の地方仏全体に共通する造像傾向を端的に示す作例です。なお、この十一面観音立像は客仏ではないかと考えられています。

南蛮胴具足(徳川家康所用)

〔種別〕工芸

 徳川頼宣が父家康所用の品として家康を祀った東照宮に奉納したものです。ヨーロッパ製の兜と胴に面頬・草摺・脇当を付けて具足としたもので、兜鉢は鉄製烏帽子形、肩当つきの胴は前後二枚胴からなります。10ヶ所の火縄銃の弾痕が前胴にあることから、強度を試験したいわゆる「試し胴」であったと考えられます。南蛮胴具足は室町時代末期に火縄銃とともにもたらされた西洋式の甲冑を指していいますが、本品は兜・胴ともにヨーロッパ製である点など他に類を見ない貴重なものです。

刀 銘信濃守藤原国広造越後守藤原国儔

〔種別〕工芸

 日向の出身で、慶長頃に京都に在住した刀工・国広と、その弟子国儔の合作刀(身長71.2cm 反り1.8cm)です。互の目乱れの刃文を持ち、全体の姿は反りが浅くいかにも新刀らしい出来のものです。大正9年(1920)4月、紀州徳川家第15代当主徳川頼倫により奉納されました。

〔写真〕刀身

太刀 銘来国俊

〔種別〕工芸

 初代藩主徳川頼宣の佩刀と伝えられる太刀で、明治9年(1876)3月、旧藩主徳川茂承が南龍神社に奉納し、のちに南龍神社が東照宮に合祀されたため、東照宮の所蔵となったものです。刀身(身長72.4cm、反り2.5cm)は鎌倉時代末期の京都の刀工・来国俊の典型的な作で、直刃に小のたれ交じりの刃文を持ちます。なお、奉納当初から拵は付属しておらず、現在も白鞘に納められています。

〔写真〕刀身

太刀 銘備前国(以下不明 伝真長)(附 糸巻太刀拵)

〔種別〕工芸

 宝永5年(1708)5月に、五代藩主徳川吉宗が東照宮に奉納したものです。銘は「備前国」とあり、以下は不明ですが、直刃に小足入りで小互の目が交じる刃文を持つ刀身(身長79.7cm、反り3.4cm)は、三代藩主綱教が奉納した真長と共通する点が多く見られます。江戸時代に作られた太刀拵は、柄・鞘ともに紫の巻糸で、梨子地に葵紋を散らした蒔絵の鞘に魚々子を打った赤銅地に金で葵紋をあしらった金具が付けられています。

〔写真〕糸巻太刀拵

太刀 銘伯耆大原真守(附 糸巻太刀拵)

〔種別〕工芸

 刀身は、平安時代後期の伯耆国の刀工で、安綱の子といわれる真守の作です。小乱に小丁字交じりの刃文を持つ腰反りの高い小鋒の太刀(身長75.2cm、反り2.4cm)です。二字銘の「真守」や三字銘の「真守造」が多いなかで長銘を切っている点も貴重であり、大原真守を代表する名作として知られています。江戸時代に作られた付属する糸巻太刀拵は、柄巻・渡巻ともに茶色の巻糸で、鞘は梨子地蒔絵に魚々子を打った赤銅地に金の葵紋をあしらった金具が付けられています。

〔写真〕糸巻太刀拵

太刀 銘真長(附 糸巻太刀拵)

〔種別〕工芸

 紀州藩三代藩主徳川綱教が奉納したもので、直刃に丁字足が入る刃文を持つ刀身(身長70.7cm、反り2.0cm)は五代藩主吉宗奉納のものと同様、鎌倉時代の備前鍛冶・真長の作です。江戸時代に作られた太刀拵は柄・鞘ともに紫色の巻糸で、鞘は梨子地蒔絵に赤銅造りの金具が付けられています。

〔写真〕糸巻太刀拵